天衣無縫の画家 山入端一博 回顧展
「いっぱくさん」のまなざし
シリーズ2「郷愁と抵抗の詩〜奈良での教員時代の油絵」
8月25日〜9月6日
開催にあたって
いっぱくさんは、宮崎で終戦を迎えたあと、しばらく鹿児島の塩田で働き、その後上京。
早稲田大学を卒業後、奈良県桜井市に教職を得て教壇に立つ傍ら、絵筆を持ち続け多くの作品や習作を描き続けました。
今回開催する第2回「いっぱくさん」のまなざし展では、教師生活の大半を過ごした奈良・桜井市時代に制作した油絵を中心に構成。
加えて、今回新たに画用紙に描かれた習作群を整理し、その中から数点を選んで展示します。
この時期描かれた油絵は、いっぱくさんの代表作とされる「星座シリーズ」や「馬シリーズ」、「きじむなあシリーズ」のような軽やかさとは異なり、油絵の具が分厚く塗られた荒々しく乾いた絵肌と色彩が際立つのが特徴です。
一方、習作では、いろいろな表現が試みられていて、いっぱくさん自身、絵画表現の模索の日々だったのではないかと思われます。
いっぱくさんに、実際のところどういう思いだったのかと問う機会はもうありませんが、残された作品群から何か感じ取れるものがあるのではないでしょうか。
今回展示されている作品の多くは、絵の具のひび割れや剥離などが見られます。
沖縄の高温多湿という環境は、油絵にとって決して良い環境とは言えません。
作品の保存管理という課題は、いっぱくさんの絵に限ったことではなく、沖縄の多くの油絵を描いてきた人たちや、残された作品を持つ遺族やコレクターが直面している問題ではないかと思います。
「いっぱくさんのまなざし」を思い巡らすとともに、保存管理と活用についても考えていただければと思います。
平成21年8月25日(火)
ギャラリーみんたまあ
代 表 大城良治